自動ドアは「人」を見ていない? 黒い服や真夏で開かないのは、あなたのせいじゃない

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自動ドアの前に立ったのに、全然反応しなかった。なんか影が薄い人間のようでちょっとヘコむ。

黒い服を着ている時や、真夏の屋外で自動ドアの前に立った時、「なぜ開かないのか」と不思議に思ったことがある人は多いでしょう。

実は、自動ドアは「人そのもの」を認識しているわけではなく、床に当てた光の反射のしかた、または床との温度の違いを手がかりに、「そこに何かがいる」と判断しているのです。

この仕組みを知ると、黒い服や真夏の高温で開かない理由が、わかってきますね。

自動ドアが見ているのは「人」ではなく「床との違い」

現在の主流は「光線反射方式」と呼ばれるセンサーで、ドアの前方の床に向けて、目には見えない近赤外線を照射し、床からの反射光の量がどれだけ変化したかを読み取っています。

人が検出エリアに入ると、床からの反射光の量が変化し、この変化を検知して、自動ドアは開閉を判定しているあけで、けっして人の輪郭を認識しているわけではないんです。

一方、以前主流であった「熱線式センサー」は、人間の体温と周囲の温度を比較して検知し作動するというもので、人間の体温は周囲の物体と比べて暖かいため、温度差を検知し自動ドアに向かってくるのが人間だと認識する仕組みとなっていました。

しかし、この熱線式センサー方式、夏場など周囲温度が上がると、人体との温度差を感知しにくくなり、特に屋外では温度変化に左右されやすく、現在では室内の自動ドアにのみ導入されることが多くなっています。

なにせ、夏場には30度を超えるような温度が連発していますしね。

黒い服や真夏が「違い」を消す理由

では、なぜ黒い服や真夏の高温で自動ドアは開きにくくなるのでしょうか?

実は、黒・濃色の服、毛足の長い起毛素材、濃い髪色は、近赤外線を吸収しやすく、反射光の変化が小さくなります。

自動ドアのセンサーは床からの反射光の変化を検知しているわけですから、この変化が小さいと「誰も入ってきていない」と誤認してしまいます。

さらに、絨毯敷きの床では床自体の反射率が下がり、変化がさらに検知されにくくなりますから、黒いコートに黒髪で、絨毯敷きの床に立った場合、反射光の変化が小さく「透明人間」に近い状態になってしまうのです。

逆に、光沢のある服や明るい色の服、腕を振るなどの大きな動きで反射光を大きく変化させると、ドアはスムーズに反応してくれます。

真夏の高温で開かない理由は、熱線式センサーの特性にあり、夏場は周囲温度が上がって人体との温度差を感知しにくくなり、センサーの反応が鈍くなります。

自動ドアには「開ける係」と「挟まない係」がいる

自動ドアの安全設計には、もう一つの重要な仕組みがあって、それが「開ける係(起動センサー)」と「挟まない係(補助センサー)」の役割分担。

起動センサーはドアを開ける合図を検知し、補助センサーは閉まる途中の人を検知して衝突や挟み込みを防ぎ、この補助光電センサーの設置は、全国自動ドア協会(JADA)が推奨する業界の上乗せ対策であり、JIS A 4722 そのものが必須にしていない項目を含んでいます。

JIS A 4722(歩行者用自動ドアセット−安全性)は、2017年3月に制定され、2022年9月にバリアフリー対応を追加改正されました。

車椅子使用者用便房用自動ドアには、床面から500〜600mmと150〜200mmの二段の検知保護装置(光電センサー)を設けることが規定され、補助光線センサの設置高さは床から500〜700mm(1 光線)を基本とし、障害者・高齢者・子供が多く利用する場所は高さの異なる複数の光線を設けることが推奨されています。

この構造は、自動ドアの安全規格が、技術の普及に後から追いつく形で「誰を標準と見なすか」という観点から見直され、2022年のバリアフリー改正は、車椅子や小さな子どもといった「一段のセンサーでは拾えない体」を後から数え直す作業だったと言えます。

「開かない=自分のせい」から「仕組みの理解」へ

自動ドアが開かない経験をした時、多くの人は「自分が影が薄いのか」「故障なのか」と不安や違和感を感じます。

しかし、この仕組みを知ると、黒い服や真夏の高温で開かないのは、「故障」や「自分のせい」ではなく、検知原理上の「違いが作りにくい条件」なのだとわかりますし、服装・床材・季節という具体条件で開きやすさが変わることを理解しておくことで、必要に応じて動きや服装で反射光を変化させる対処が可能になります。

腕を振る、明るい色の服を選ぶといった対処法は「ごまかし」ではなく、検知原理に即した合理的な行動なわけですね。

また、安全設計においては「開ける係」と「挟まない係」はまったく別の役割として考えられていて、業界団体が独自の上乗せ基準を設けていることもあります。

こうした前提を知っておくと、建物ごとの安全性の差を「たまたま」ではなく、「どこで割り切った設計なのか」として読み解けるようになります。

自動ドアは「人そのもの」を見分けているわけではなく、床に当たった光の返り方や、床との温度差といった手がかりから、「そこに何かがいる」と判断しています。

この仕組みを知っていると、自動ドアへの期待のしかたや距離感が、少し変わってくるのでは?


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