• 夏は暑さだけで疲れているわけじゃない。冷房と外気を往復する体の話

    夏は暑さだけで疲れているわけじゃない。冷房と外気を往復する体の話

    外に出た瞬間、まとわりつくような熱気。

    駅まで歩くだけで汗をかき、電車に乗ると一気に冷える。

    駅を出ればまた暑く、会社に着けば今度は冷房。昼休みに外へ出て、コンビニや飲食店に入ればまた体が冷える。

    考えてみると、今の夏は「暑い場所で一日を過ごす」という感じではなく「暑い、冷える、暑い、また冷える」を繰り返している日々になっている。

    一日の中で何度も繰り返されていて、朝は元気だったのに、午後になると妙に頭が重い。肩がこわばる。なんとなくだるい。手足だけ冷えている。

    そんな夏の不調は、単純に「暑さにやられた」だけではない。

    今の夏は、体が何度も温度調整をしている。

    人の体は、体温を一定に保つために細かな調整を続けていて、暑い場所では皮膚の血管を広げて熱を逃がし、寒いと感じる場所では血管を縮め、熱が逃げすぎないようにする。

    この調整に関わっているのが自律神経。

    福井赤十字病院脳神経内科の早瀬史子医師は、猛暑の屋外と冷房の効いた室内を何度も行き来することで自律神経に負担がかかり、頭痛やめまい、ふらつき、倦怠感、手足の冷えなどにつながることがあると説明している。

    いわゆる「クーラー病」と呼ばれる状態。

    ただし、クーラー病という正式な病名があるわけではなく、冷房や大きな温度差に関連して起きるさまざまな不調を、まとめてそう呼んでいる。

    ここで少し見方を変えると問題は「冷房が悪い」ということではない。

    猛暑の日に冷房を使わないほうが、むしろ危険な状態になるので、気にしておきたいのは、自分の体が一日の中で何回、暑さと冷えの切り替えをしているかだ。

    「設定温度」だけでは解決しにくい

    オフィスの冷房が寒いと、「設定温度を上げたい」と思うが、職場や商業施設では、自分だけで温度を決められないことも多い。

    隣の人は暑がっているのに、自分は寒い。

    窓際は暑いのに、冷風が当たる席だけ寒い。

    こうなると「何度が正解なのか」という話だけでは解決しにくい問題になってきます。

    そこで現実的なのが、空間全体を変えようとするより、自分の体に冷えをためない工夫を持っておくこと

    冷風が直接当たるなら、風向きを変えるようにして、可能なら席を少しずらすことも考えるべき。

    首や肩、お腹、足元が冷えやすいなら、薄手のカーディガンやストールを一枚置いておく。

    夏なのに羽織りものを持ち歩くのは少し妙な感じもするが、外気温が高いほど、室内との落差は大きくなりやすい。

    結局のところ、外にいるよりも、どこかしらの屋内で過ごすことのほうが時間的に長くなるのだから、夏の羽織りものは必須といってもいい。

    「暑さ対策」と「冷え対策」を同時に持つ。

    今の夏は、これまでの「夏」とは違う。

    夏に羽織ものでちょうどいい。

    午後の頭重感は、仕事疲れだけとは限らないし、冷房の効いた部屋に長くいると、肩や首まわりが冷えて、筋肉がこわばっていることもある。

    ずっとパソコンを見ている仕事なら、なおさら気づきにくい。

    そんなときは、座ったまま肩を前後に回したり、肩甲骨を意識して動かしたりするだけでも、固まった体を動かすきっかけになる。

    休憩のついでにゆっくり呼吸する。

    冷たい飲み物ばかり続いているなら、温かい飲み物を選ぶこともできる。

    どれも「夏バテを一発で解決する方法」ではないが、そのくらい小さいなことをやっておいたほうがいい。

    仕事中に毎回きちんとストレッチをするのは難しいし、外出するたびに体調管理を考えているのも疲れる。

    だから、冷房の強い場所に入ったら一枚羽織ればいいし、午後に頭が重くなったら肩や頭を回したり、席を立つことだけでもいい。

    休憩するときには呼吸を少しゆっくりする。

    考えなくてもできる程度の対策をいくつか持っておくこと。

    夏の体調管理は、そのほうが続けやすいし、体調の変化を全部「夏だから」で片づけない。

    もちろん、頭痛やめまい、だるさの原因がすべて冷房や温度差というわけではないが・・・。

    そして、症状が長引いたり、普段より強かったりするなら、「クーラー病だろう」と自己判断だけで済ませず、医療機関への相談も考えたい。

    夏はどうしても、不調の理由をひとまとめにしやすい。

    • 寝不足かな
    • 夏バテかな
    • 仕事で疲れているだけかな

    もちろん、それもあるのかもしれないが、ただ、一日の行動を思い返してみると、別の見え方もうまれてくる。

    • 朝、自宅から駅まで歩いた。
    • 電車で冷えた。
    • 駅から会社までまた暑かった。
    • オフィスで数時間冷えた。
    • 昼食で外に出た。
    • 店に入ってまた冷えた。
    • 午後も冷房の中で仕事をした。

    こうして並べると、体は思っている以上に忙しい。

    「今日は何回、暑いと寒いを往復しただろう」

    猛暑の夏に、エアコンを避けて生活するのは現実的ではないし「冷房を使うか、使わないか」で考えなくていい。

    むしろ、自分が一日の中で、どれくらい温度差のある場所を行き来しているかに注目してみるといい。

    • 午後になると頭が重い日
    • 会社にいると妙に肩がこる日
    • 帰宅するとどっと疲れている日

    そんなときは、その日の「暑い→冷える」の回数を少し思い出してみる。

    そこに心当たりがあるなら、次の日から首元を守る一枚を持っていったり、冷風の当たり方を変えてみたり、体を少し動かしてみたり。

    夏の不調には、原因をひとつに決めきれないものも多いが、それでも、自分の一日を見直すことで、「何を少し変えればいいか」は見つけやすくなる。

    今年の夏は、暑さだけではなく、暑さと冷えの往復回数も体調を見る目安のひとつにしてみてもいい。

  • 猛暑対策は「昼だけ」では足りない。24時間で考える夏の体調管理

    猛暑対策は「昼だけ」では足りない。24時間で考える夏の体調管理

    お盆を過ぎると、暑さのピークは越えたような感覚になりやすい。

    日差しを避ける、外出時に体を冷やすといった対策も、少しずつ緩み始める時期なんだが、今年はその感覚と実際の気温にずれが生じる可能性がありそう。

    気象庁が2026年8月6日に公開した全国1か月予報では、8月8日から9月7日まで、全国的に気温が高くなる見込みが示されていて、特に東日本と西日本では高温状態が続き、期間の前半はかなり高くなると予想されている。

    夏後半の猛暑対策は、昼間や外出時だけで十分なのだろうか?

    これまでの暑さ対策は、日傘や冷感グッズなど、強い日差しの下でどう過ごすかに意識が向きやすかったが、高温状態が長引けば、暑さは一時的な外出の問題ではなくなる。

    夜間や室内、睡眠中まで含めた生活環境全体の問題として捉える必要が出てくる。

    厚生労働省は、熱中症は屋外だけでなく、室内で何もしていない場合にも起こり得るとして、水分を補給することや暑さを避けることを呼びかけています。

    この点から見えてくるのは、暑さへの備えを24時間の生活リズムで考えることで、外出時に体を冷やすだけでなく、就寝時の冷房や寝具、起床後の水分補給、入浴する時間、家事や外出を行う時間までが対策の対象になっていきます。

    日中の暑さを避けて過ごしていても、夜間や室内で冷房を控えすぎれば、暑さから逃れたことにはならないし、反対に「一日中ずっと同じように冷房を使うか、まったく使わないか」という二者択一で考える必要もない。

    電気代が上がってきている今、必要な時間や場面では冷房を使い、家事や外出の時間、ほかの電力使用を調整するという、そんな組み立て方への関心が広がっていくことだろう。

    経済産業省は、2026年7月、8月、9月使用分の電気・ガス料金を支援しておち、なかでも8月の電気料金への支援単価は、7月と9月より高く設定された。

    電気料金が気になるからこそ、冷房を一律に我慢するのではなく、体調管理に必要な冷房は使いながら、一日の別の部分で電力の使い方を見直すという発想は重要で、エアコンの温度ももう少し考えなければならない。

    個人的には、外気温より、-3℃くらいが一番電力的なバランスがいいとは思うが、外気温が35℃ともなってくると、そうは言っていられない。

    暑さ対策と節電を対立させるのではなく、生活時間全体の配分として考えていかなければならなくなるだろう。

    今後は、日中の最高気温だけでなく、最低気温や9月の高温状況にも目を向つつ、熱中症の救急搬送数、電力需要、夜間のエアコン利用がどう動くかも、生活者の意識の変化を映す手がかりになっていくはず。

    猛暑対策の対象が、外出時の数時間から睡眠や家事を含む一日全体へ広がっている中、小さな見直しの積み重ねが「夏の体調管理は24時間で考える」という新しい当たり前を形づくっていく。

  • 防災備蓄は「保存する箱」から「普段使う在庫」へ

    防災備蓄は「保存する箱」から「普段使う在庫」へ

    防災用品を確認すると、飲料水や非常食は用意していても、携帯トイレや衛生用品までは十分にそろっていなかったりします。

    さらに、停電したときの暑さや寒さへの備えとなると、何を準備していいのがわからないという家庭も少なくないようです。

    内閣府の「防災に関する世論調査」では、3日分以上の飲料水を備蓄している割合は69.8%、食料品は59.8%だった一方、衛生用品は38.4%、携帯トイレ・簡易トイレは27.2%にとどまっているようです。

    水や食べ物を備えておく意識は広がっていても、災害後の生活を維持するための備えには大きな差があるようで、どうしても家庭の防災が「何を食べるか」に偏ってしまい、「どのように生活を続けるか」までは想像できていないことが、この数字から見えてきます。

    内閣府の調査票で例示されている備蓄についても、食料と水だけではないですし、最低3日分、できれば1週間分として、衛生用品、携帯トイレ、熱源、暑さ・寒さ対策用品などが挙げられているんです。

    特に真夏の災害では、食料の確保とは別の問題が生じ、停電時の暑さにどう対応するか?衛生環境をどう保つか?トイレを使えない状況にどう備えるか?

    非常食の箱だけでは補えない領域が、暮らしのなかにはいくつも存在しているんです。

    だからといって、防災袋へ次々と専用品を詰め込めば解決するわけではないですし、種類が増えるほど、中身や期限を確認し、必要な量を維持する手間も増えてきます。

    年に一度だけ防災袋を開ける方法では、どうしても食品以外の不足に気づきにくく、確認する季節によっても確認すべき事項が変わってきてしまいます。

    そこで今後新しい生活様式として、防災備蓄を「長期間保存する非常用品」ではなく、「日常的に使う在庫」として捉える考え方が広まってきそう。

    飲料やレトルト食品、衛生用品などを普段から使い、減った分を補充し、モバイル電源や暑さ対策用品も含め、非常時だけの特別な箱を作るのではなく、日常生活の在庫管理へと防災を組み込んでいく。

    いわゆるローリングストックは、食料の保存方法というより、備えを途切れさせない仕組みとして位置づけ直されていくのではないでしょうか?

    この方法なら、防災のために用意したものが生活から切り離されにくいですし、何が残り、何が減っているのかを普段の買い物のなかで把握できるため、備蓄の偏りにも気づきやすくなります。

    概念だけを考えると単純にも思えるのですが、実際は必要な在庫はどの家庭でも同じではないですし、世帯人数や家族構成によって、必要な食品や日用品の量は変わってきます。

    飲料水と非常食の数だけを確認するのではなく、携帯トイレや衛生用品を含め、家族が生活を続けるうえで何が不足しているかを見る必要は出てきます。

    毎年8月30日から9月5日までは防災週間に定められています。

    その直前期には、メディアや小売の防災企画が増え始め、2026年は真夏の時期と重なるため、従来の非常食中心の備えに加え、停電時の暑さや衛生環境を含めた「夏向け備蓄」も意識されそうです。

    防災用品を一度に買いそろえることから、普段の在庫を少し厚く持つことへ。

    年に一度点検する防災袋から、使うたびに補充する日常の仕組みへ。

    これまでの春夏秋冬のあった頃の日本とは様相が変わってきていますし、もはや熱帯雨林かのような天候に近づいてきている日本の夏。

    備蓄の意味は、少しずつ変わり始めていくことでしょう。

    防災袋へ新しい商品を詰め込むだけが備えではなくなり、普段使う食品や日用品を切らさず、使った分を戻していくという小さな習慣の積み重ねが、「防災」を意識しなくても維持できる備蓄という発想に繋がり、暮らしの当たり前として根づいていくことでしょう。