• 猛暑対策は「昼だけ」では足りない。24時間で考える夏の体調管理

    猛暑対策は「昼だけ」では足りない。24時間で考える夏の体調管理

    お盆を過ぎると、暑さのピークは越えたような感覚になりやすい。

    日差しを避ける、外出時に体を冷やすといった対策も、少しずつ緩み始める時期なんだが、今年はその感覚と実際の気温にずれが生じる可能性がありそう。

    気象庁が2026年8月6日に公開した全国1か月予報では、8月8日から9月7日まで、全国的に気温が高くなる見込みが示されていて、特に東日本と西日本では高温状態が続き、期間の前半はかなり高くなると予想されている。

    夏後半の猛暑対策は、昼間や外出時だけで十分なのだろうか?

    これまでの暑さ対策は、日傘や冷感グッズなど、強い日差しの下でどう過ごすかに意識が向きやすかったが、高温状態が長引けば、暑さは一時的な外出の問題ではなくなる。

    夜間や室内、睡眠中まで含めた生活環境全体の問題として捉える必要が出てくる。

    厚生労働省は、熱中症は屋外だけでなく、室内で何もしていない場合にも起こり得るとして、水分を補給することや暑さを避けることを呼びかけています。

    この点から見えてくるのは、暑さへの備えを24時間の生活リズムで考えることで、外出時に体を冷やすだけでなく、就寝時の冷房や寝具、起床後の水分補給、入浴する時間、家事や外出を行う時間までが対策の対象になっていきます。

    日中の暑さを避けて過ごしていても、夜間や室内で冷房を控えすぎれば、暑さから逃れたことにはならないし、反対に「一日中ずっと同じように冷房を使うか、まったく使わないか」という二者択一で考える必要もない。

    電気代が上がってきている今、必要な時間や場面では冷房を使い、家事や外出の時間、ほかの電力使用を調整するという、そんな組み立て方への関心が広がっていくことだろう。

    経済産業省は、2026年7月、8月、9月使用分の電気・ガス料金を支援しておち、なかでも8月の電気料金への支援単価は、7月と9月より高く設定された。

    電気料金が気になるからこそ、冷房を一律に我慢するのではなく、体調管理に必要な冷房は使いながら、一日の別の部分で電力の使い方を見直すという発想は重要で、エアコンの温度ももう少し考えなければならない。

    個人的には、外気温より、-3℃くらいが一番電力的なバランスがいいとは思うが、外気温が35℃ともなってくると、そうは言っていられない。

    暑さ対策と節電を対立させるのではなく、生活時間全体の配分として考えていかなければならなくなるだろう。

    今後は、日中の最高気温だけでなく、最低気温や9月の高温状況にも目を向つつ、熱中症の救急搬送数、電力需要、夜間のエアコン利用がどう動くかも、生活者の意識の変化を映す手がかりになっていくはず。

    猛暑対策の対象が、外出時の数時間から睡眠や家事を含む一日全体へ広がっている中、小さな見直しの積み重ねが「夏の体調管理は24時間で考える」という新しい当たり前を形づくっていく。

  • 防災備蓄は「保存する箱」から「普段使う在庫」へ

    防災備蓄は「保存する箱」から「普段使う在庫」へ

    防災用品を確認すると、飲料水や非常食は用意していても、携帯トイレや衛生用品までは十分にそろっていなかったりします。

    さらに、停電したときの暑さや寒さへの備えとなると、何を準備していいのがわからないという家庭も少なくないようです。

    内閣府の「防災に関する世論調査」では、3日分以上の飲料水を備蓄している割合は69.8%、食料品は59.8%だった一方、衛生用品は38.4%、携帯トイレ・簡易トイレは27.2%にとどまっているようです。

    水や食べ物を備えておく意識は広がっていても、災害後の生活を維持するための備えには大きな差があるようで、どうしても家庭の防災が「何を食べるか」に偏ってしまい、「どのように生活を続けるか」までは想像できていないことが、この数字から見えてきます。

    内閣府の調査票で例示されている備蓄についても、食料と水だけではないですし、最低3日分、できれば1週間分として、衛生用品、携帯トイレ、熱源、暑さ・寒さ対策用品などが挙げられているんです。

    特に真夏の災害では、食料の確保とは別の問題が生じ、停電時の暑さにどう対応するか?衛生環境をどう保つか?トイレを使えない状況にどう備えるか?

    非常食の箱だけでは補えない領域が、暮らしのなかにはいくつも存在しているんです。

    だからといって、防災袋へ次々と専用品を詰め込めば解決するわけではないですし、種類が増えるほど、中身や期限を確認し、必要な量を維持する手間も増えてきます。

    年に一度だけ防災袋を開ける方法では、どうしても食品以外の不足に気づきにくく、確認する季節によっても確認すべき事項が変わってきてしまいます。

    そこで今後新しい生活様式として、防災備蓄を「長期間保存する非常用品」ではなく、「日常的に使う在庫」として捉える考え方が広まってきそう。

    飲料やレトルト食品、衛生用品などを普段から使い、減った分を補充し、モバイル電源や暑さ対策用品も含め、非常時だけの特別な箱を作るのではなく、日常生活の在庫管理へと防災を組み込んでいく。

    いわゆるローリングストックは、食料の保存方法というより、備えを途切れさせない仕組みとして位置づけ直されていくのではないでしょうか?

    この方法なら、防災のために用意したものが生活から切り離されにくいですし、何が残り、何が減っているのかを普段の買い物のなかで把握できるため、備蓄の偏りにも気づきやすくなります。

    概念だけを考えると単純にも思えるのですが、実際は必要な在庫はどの家庭でも同じではないですし、世帯人数や家族構成によって、必要な食品や日用品の量は変わってきます。

    飲料水と非常食の数だけを確認するのではなく、携帯トイレや衛生用品を含め、家族が生活を続けるうえで何が不足しているかを見る必要は出てきます。

    毎年8月30日から9月5日までは防災週間に定められています。

    その直前期には、メディアや小売の防災企画が増え始め、2026年は真夏の時期と重なるため、従来の非常食中心の備えに加え、停電時の暑さや衛生環境を含めた「夏向け備蓄」も意識されそうです。

    防災用品を一度に買いそろえることから、普段の在庫を少し厚く持つことへ。

    年に一度点検する防災袋から、使うたびに補充する日常の仕組みへ。

    これまでの春夏秋冬のあった頃の日本とは様相が変わってきていますし、もはや熱帯雨林かのような天候に近づいてきている日本の夏。

    備蓄の意味は、少しずつ変わり始めていくことでしょう。

    防災袋へ新しい商品を詰め込むだけが備えではなくなり、普段使う食品や日用品を切らさず、使った分を戻していくという小さな習慣の積み重ねが、「防災」を意識しなくても維持できる備蓄という発想に繋がり、暮らしの当たり前として根づいていくことでしょう。

  • 混雑率は下がったのに、なぜ東京の電車通勤は楽にならないのか

    混雑率は下がったのに、なぜ東京の電車通勤は楽にならないのか

    東京圏の電車は、数字のうえでは以前より空いているようですが、それでも、毎朝の通勤が楽になったと感じる人は、それほど多くないのではないでしょうか?

    混雑が改善しているという統計と、目の前にある息苦しい車内。

    この食い違いは、どちらかが間違っているからというわけでもなく「東京圏の平均」と「自分が毎日乗る一本の電車」は、まったく別のものだからといってもいいでしょう。

    東京圏の平均混雑率は143%まで下がった

    国土交通省が公表した2025年度の都市鉄道混雑率調査によれば、東京圏31区間の平均混雑率は143%となっているようで、コロナ禍前に150%台後半から160%台で推移していた時期と比べると、低い水準になったと言えます。

    テレワークや時差出勤が広がり、毎日決まった時間に出社する人が減り、その効果が数字にも表れていると考えられます。

    ところが、実際の朝のホームに立つと、改善を実感できない日がありますよね?

    到着した電車を一本見送り、次の車両にも身体を押し込む。乗車中はスマートフォンを持ち替える余裕さえない。

    こんな状況では「本当に混雑は緩和したのだろうか」と感じるのも無理はありません。

    「平均」では毎朝のつらさを説明できない

    この違和感の理由の一つは、平均値が路線ごとの差をならしてしまうことで、調査によれば、JR埼京線の板橋―池袋間が167%、東京メトロ日比谷線の三ノ輪―入谷間が163%、東西線の木場―門前仲町間とJR総武快速線の新小岩―錦糸町間が160%。

    新交通システムまで含めると、日暮里・舎人ライナーの赤土小学校前―西日暮里間は176%になっていて、東京圏全体の平均が143%でも、通勤者が毎日利用する区間は160%を超えていることがまだまだあるんです。

    それとは対照的に、中央・総武緩行線の代々木―千駄ケ谷間は93%、半蔵門線の渋谷―表参道間は111%となっていて、「東京の電車が平均的にどうなったか」と「自分の通勤がどうなったか」は必ずしも一致しません。

    というのも、混雑は東京全体に均等に存在するのではなく、都心へ向かう特定の区間へ集中しているから。

    混雑率は通勤者の疲労を直接表す数字ではないですし、混雑率が同じでも、区間ごとによって体感は変わります。

    短い区間だけ混雑する電車と、長時間混雑が続く電車では疲れ方が違いますし、乗り換え回数、遅延の頻度、ホームの狭さ、車内温度、荷物の大きさによっても負担は変わってきます。

    さらに、混雑率が以前より10ポイント下がっていても、依然として立ったまま身動きが取りにくい状態であることには変わりないんですよね。

    そもそも100%を超えているわけですから・・・。

    統計が示しているのは、輸送力に対して何人が乗っているかであり、通勤者がどれだけ消耗したかを測定しているわけではありません。

    数字としては改善していても、生活の質が同じ割合で改善するとは限らないのです。

    テレワークだけでは満員電車が消えない理由

    在宅勤務の定着によって、通勤する人の総数は減ったとはいえ、それでも混雑が減らないのは、出社する時間と場所が大きく変わっていないからでしょう。

    週5日の出社が週3日になっても、多くの人が同じ曜日の午前9時を目指せば、その時間帯には需要が集中します。

    対面会議や朝礼、取引先の営業時間が従来のままであれば、個人だけが乗車時間をずらすのも簡単ではありません。

    これは、通勤者一人ひとりの工夫だけでは解決しにくい問題で、社会全体で考えなければならない問題でもあります。

    鉄道会社の輸送力だけでなく、企業の始業時刻、出社日の決め方、会議の時間、住宅と職場の位置関係までが混雑を生み出しているわけで、満員電車は交通だけの問題ではなく、働き方と都市構造が重なって生まれる現象なのです。

    通勤を「仕方がない」で終わらせない

    混雑率が下がったというニュースは、改善の兆しとして受け取れるのですが、平均値を見て「もう満員電車の問題は小さくなった」と判断するのは早計で、大切なのは、東京圏全体の数字だけでなく、自分が利用する路線、区間、時間帯を見ること。

    もし選択肢があるなら、15分だけ乗車時間をずらしたり、混雑する区間を避ける経路と比較したりしてもよいでしょう。

    所要時間が少し長くても、座れる経路のほうが一日の疲労を減らせるでしょうし、仕事する前から疲弊してしまうのは本末転倒。

    勤務先にも、出社日ではなく出社時間を分散できないかという視点が必要で、従業員の作業効率を考えるとたった30分のズレを作るだけでも、能率は上がってくるもの。

    平均143%という数字の裏には、176%の電車に毎朝乗る人もいれば、100%を下回る区間を利用する人もいます。

    「以前より改善したはずなのに、まだつらい」という感覚は、わがままではなく、平均からこぼれ落ちた、自分の生活に関する正確な実感といってもいいでしょう。

    数字は社会の変化を教えてくれます。

    しかし、自分の暮らしを判断するときには、平均よりも毎朝の身体感覚のほうが信用できるんです。