防災用品を確認すると、飲料水や非常食は用意していても、携帯トイレや衛生用品までは十分にそろっていなかったりします。
さらに、停電したときの暑さや寒さへの備えとなると、何を準備していいのがわからないという家庭も少なくないようです。
内閣府の「防災に関する世論調査」では、3日分以上の飲料水を備蓄している割合は69.8%、食料品は59.8%だった一方、衛生用品は38.4%、携帯トイレ・簡易トイレは27.2%にとどまっているようです。
水や食べ物を備えておく意識は広がっていても、災害後の生活を維持するための備えには大きな差があるようで、どうしても家庭の防災が「何を食べるか」に偏ってしまい、「どのように生活を続けるか」までは想像できていないことが、この数字から見えてきます。
内閣府の調査票で例示されている備蓄についても、食料と水だけではないですし、最低3日分、できれば1週間分として、衛生用品、携帯トイレ、熱源、暑さ・寒さ対策用品などが挙げられているんです。
特に真夏の災害では、食料の確保とは別の問題が生じ、停電時の暑さにどう対応するか?衛生環境をどう保つか?トイレを使えない状況にどう備えるか?
非常食の箱だけでは補えない領域が、暮らしのなかにはいくつも存在しているんです。
だからといって、防災袋へ次々と専用品を詰め込めば解決するわけではないですし、種類が増えるほど、中身や期限を確認し、必要な量を維持する手間も増えてきます。
年に一度だけ防災袋を開ける方法では、どうしても食品以外の不足に気づきにくく、確認する季節によっても確認すべき事項が変わってきてしまいます。
そこで今後新しい生活様式として、防災備蓄を「長期間保存する非常用品」ではなく、「日常的に使う在庫」として捉える考え方が広まってきそう。
飲料やレトルト食品、衛生用品などを普段から使い、減った分を補充し、モバイル電源や暑さ対策用品も含め、非常時だけの特別な箱を作るのではなく、日常生活の在庫管理へと防災を組み込んでいく。
いわゆるローリングストックは、食料の保存方法というより、備えを途切れさせない仕組みとして位置づけ直されていくのではないでしょうか?
この方法なら、防災のために用意したものが生活から切り離されにくいですし、何が残り、何が減っているのかを普段の買い物のなかで把握できるため、備蓄の偏りにも気づきやすくなります。
概念だけを考えると単純にも思えるのですが、実際は必要な在庫はどの家庭でも同じではないですし、世帯人数や家族構成によって、必要な食品や日用品の量は変わってきます。
飲料水と非常食の数だけを確認するのではなく、携帯トイレや衛生用品を含め、家族が生活を続けるうえで何が不足しているかを見る必要は出てきます。
毎年8月30日から9月5日までは防災週間に定められています。
その直前期には、メディアや小売の防災企画が増え始め、2026年は真夏の時期と重なるため、従来の非常食中心の備えに加え、停電時の暑さや衛生環境を含めた「夏向け備蓄」も意識されそうです。
防災用品を一度に買いそろえることから、普段の在庫を少し厚く持つことへ。
年に一度点検する防災袋から、使うたびに補充する日常の仕組みへ。
これまでの春夏秋冬のあった頃の日本とは様相が変わってきていますし、もはや熱帯雨林かのような天候に近づいてきている日本の夏。
備蓄の意味は、少しずつ変わり始めていくことでしょう。
防災袋へ新しい商品を詰め込むだけが備えではなくなり、普段使う食品や日用品を切らさず、使った分を戻していくという小さな習慣の積み重ねが、「防災」を意識しなくても維持できる備蓄という発想に繋がり、暮らしの当たり前として根づいていくことでしょう。


